地球を代表するアーティストたちが、月に行く。
今日、そんな素晴らしい発表があった。
何が素晴らしいって、この月への旅は科学やビジネスのためだけではなく、一番の目的はアートということだ。
Yusaku will be bringing 8 (brave) artists & cultural figures with him on the journey around the moon! https://t.co/PCU23HYTa9
— Elon Musk (@elonmusk) September 18, 2018
#dearMoonって?
数日前、SpaceX社は民間初の月旅行者を発表するとツイートしていた。
SpaceX has signed the world’s first private passenger to fly around the Moon aboard our BFR launch vehicle—an important step toward enabling access for everyday people who dream of traveling to space. Find out who’s flying and why on Monday, September 17. pic.twitter.com/64z4rygYhk
— SpaceX (@SpaceX) September 14, 2018
ただ、そのときは以前と「BFR」の形が変わったことのほうが、話題の中心だった。
BFRというのは「Big Falcon Rocket」の略である。
現在SpaceXが打ち上げている「Falcon 9 ロケット」、「Falcon heavy ロケット」の次のロケットだ。
しばらくして、SpaceXのCEO、Elon Muskが意味深長なツイートをする。
🇯🇵
— Elon Musk (@elonmusk) September 14, 2018
「あ、日本人がチケット買ったのか」と、特段気にせず。
以前としてBFRの形のほうが話題の中心。
ところが今日、蓋を開けてみて驚愕した。
購入した前澤友作氏は自分の席のみならず、他にも席を買って「#dearMoon」というプロジェクトを公表したのである。
世界的に有名なアーティストたちを月旅行に招待し、インスピレーションを得て、制作に活かしてもらうという。
なんてこった。素敵すぎる。
「どうせ月に行くのは、ビリオネアとか金持ちだろう。おもしろくない」と思っていたのだけれど、反省。
今回の件、前澤氏はビリオネアとして、その責務を果たしているような気がする。自由に使うこともできるお金の使いみちを、誰にとっても興味深い、素晴らしい企画に使った。
Hanging out with @yousuck2020 before the @SpaceX moon mission announcement pic.twitter.com/RTOwutzMtG
— Elon Musk (@elonmusk) September 18, 2018
なぜ、アーティストが月に行くことが素晴らしいのか。
さっきから、アーティストが月に行くのは素晴らしい、と言いつづけているけれど、それにはちゃんと理由がある。
昨今、“世の中の役に立つかどうか”が重要視される風潮がある。
ここで言う“世の中”は、だいたい経済の話だ。お金になるかどうか。
宇宙に関して言えば、すぐお金になるわけではない天文学や物理学は、最近どんどん予算が減らされている。何に役立つかわからないものはおしまい、という酷い話。
宇宙開発も厳しいらしいが、技術力を維持し、ほかの国にそれを誇示したり、衛星打ち上げで商売もできる。だから、打ち上がる衛星は科学探査や通信、防衛など実用的なものばかり。しかし、コストがかかりすぎて、民間ビジネスへの移行が加速している。
結局のところお金。ビジネスだ。しかも即効性が求められる。
しかし、常々思うのは、人らしさというのは感情や美術にあるということ。
たしか、アウシュヴィッツ強制収容所に入れられた、哲学者ヴィクトール・フランクルが、『夜と霧』でこんな内容のことを書いていた。どんなに過酷で疲れていて、人として気持ちが失われていくときも、美しいという感覚は健在だったと。
そんなわけで、経済面のみならず、もっと貪欲にただ「おもしろい」「楽しい」「美しい」という感覚、人間らしさを追い求める方向性があればよいのに、と思っていたのだ。
そこに、今回の「#dearMoon」でアーティストたちが月まで宇宙旅行するというアートプロジェクト。
— Elon Musk (@elonmusk) September 17, 2018
宇宙開発にも科学やビジネスではない、感覚やセンスに訴えるものがとうとうでてきた!
今までもなかったわけではない。惑星間軌道に彫刻を飛ばした例もある。
でも、ここまで誰もが楽しめる企画は初めてだろう。
改めて言うが、前澤氏のアイデアは素晴らしいと思う。
月に行っても大したインスピレーションを得ないのではないか?
ところで、アーティストたちは月でどんなインスピレーションを得て、どんなアートを制作するのだろう?
SpaceX’s next generation vehicle—BFR—will be the most powerful rocket in history, capable of carrying humans to the Moon, Mars, and beyond. https://t.co/gtC39uBC7z pic.twitter.com/urQDbdTK94
— SpaceX (@SpaceX) September 18, 2018
これは個人的な意見だけれど、月に行くのと地球でどこか観光地に行くのと、実はあまり変わらないんじゃないかと思っている。
地球を代表するような、多感で類まれなセンスを持つアーティストたちが、宇宙に行って大きく変化するとは思えない。
大したインスピレーションは受けず、「普通だった」なんて言うんじゃないか?
それを確かめるという意味でも、今から楽しみすぎる。
— Elon Musk (@elonmusk) September 17, 2018
でも、打ち上げが2023年なんだよなぁ。ちょっと先過ぎないか……。