宇宙飛行士
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民間の参入で、宇宙旅行は相当現実味を帯びてきている。数年後にはロケットを使って、宇宙経由で世界の都市を結ぶ超音速の旅客輸送をはじめる計画もある。

しかしボクにはひとつ疑問が残っていた。はたして宇宙に行きたい人は、どのくらいいるのだろう? みんなが宇宙に行ける時代になっても、誰も行かないなんてことはないのだろうか?

宇宙を志す者としては、誰も行かないと需要が足りなくて困るのだ。

大学の英語の授業で、たくさんの人にアンケートをとって結果を報告せよという課題があったので、インターネットで221人にアンケートしてみた。

結果分かったことは、どうやら宇宙旅行は慣れの問題ということだ。飛行機が登場した時代との共通点がたくさん見つかった。珍回答も続々。

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あなたは宇宙に行きたいですか?

アンケートは早稲田大学理工学部の学生4人で行った。やり方は簡単。Googleフォームで記入するページをつくって、SNSやTwitterに流しただけだ。1週間ほどで221人が答えてくれた。

まず最初にもっとも重要な質問だが、宇宙に行きたい人はどのくらいいるのだろうか?

家族に聞くと「そもそも行く必要がない」「日本がいい」との返答……。子どもが勉強しているのはその必要のない航空宇宙分野なのだが(笑)。まわりの友だちを見ても海外にさえ出たがる人はそう多くない。
この調子では宇宙など論外だろう、と思っていたのだが……

Q. 金額に関係なく宇宙に行ける場合、あなたは宇宙に行きたいですか?

A. 8割以上の人が宇宙に行きたい

意外だった。なんだ、みんな宇宙に行きたいんじゃん!

しかしこのアンケート、答えてもらった人のなかにはネット上の天文同好会「宙のネットワーク」や、早大宇宙航空研究会の会員がいる。もちろん、まったく関係のない異分野の方や幅広い年代の方々にも答えてもらっているが、割合には偏りが出ているかもしれない。SNSで協力を依頼すると、どうしてもこういう部分がネックになってしまう。

それでも予想以上だった。6、7割だと思っていたのだが、まさか8割超とは。

宇宙に行きたい人の特徴

今回のアンケートでは単に宇宙に行きたいか、行きたくないかだけでなく、それぞれの意見をもつ人の特徴を調べた。

宇宙に行きたくない派を行きたい派にできれば、宇宙業界に降ってくるお金も変わってくる。行きたくない派をなんとか宇宙に連れ出したい。まずはそれぞれの特徴を知ることからスタートだ。

宇宙に行きたい派の結果から見ていこう。ここからは珍回答も。

宇宙のどこに行きたい?

宇宙といってもいろいろある。みんなどこに行きたいのだろうか?

Q. どこへ行きたいですか?

A. 月、地球のまわり、火星……etc.

[月][地球のまわり][火星]は、例としてもともとチェックで選べるようにしていた選択肢だ。多いのは当然だろう。

やはり月に行きたい人は多かった。前澤氏のアートプロジェクト「dearMoon」の影響もあるのだろうか。いつも見ている星でもある。

[関連記事] 【#deerMoon】アーティストが月へ行く意味

おもしろかったのは[その他]を選んで書きこまれた答えだ。
多かったのが「木星」「土星」。きれいだからなあ。あとは土星の衛星「タイタン」や木星の氷の衛星「エウロパ」など。

読んでいて嬉しくなってしまったのが「どこへでも」「他の銀河系」「出来るだけ遠く」。
ボクも同意見だ。どこへ行きたいかなんて、そんな簡単に決められるものではない。行けるところまでは行きたいんだよ!(じゃあなんでそんな質問を作ったんだ!?)
一番好きな答えは、「果て」。たった二文字だが、適確だしインパクトのある言葉だと思う。今度からボクもこの答えを拝借させてもらいます。

宇宙旅行、いくらまで払う?

みんな宇宙に行きたいことはわかった。では、いくらまでなら宇宙旅行に払うのだろう?

Q. いくらまでなら、宇宙旅行に支払おうと思えますか?

A. 人それぞれ

予想に反し思いっきりばらけた。一番多いのは50〜100万円。贅沢な海外旅行くらいだろうか。
もちろん「お金がかかるとなると行きたくない」「払いたくない」という人もいた。タダで行ける旅行はないと思うのだけれどなぁ。
なかには「科研費を使う」なんてものも。ナイスアイディア!(笑)

宇宙で何する?

宇宙で何をしたいかなんて、ベタな質問だと思っていたのだけれど、200人もいると珍回答が生まれるものだ。おもしろい。抜粋して紹介。

Q. 宇宙で何をしてみたいですか?

A1. 地球を見たい、無重力を体験したい、宇宙遊泳、スポーツ

宇宙行ったら地球を見たいし無重力で遊びたい。 そりゃあそうだ。
「見上げると地球があるという状況を経験してみたい」「地球を眺めながら珈琲を飲みたい」という人もいた。良いではないか。

A2. 寝たい、ぼーっとしたい、ひなたぼっこ

どこにいようと寝たいのが人間ですよね。睡眠不足はいい仕事の敵だ。それに美容にもよくねえ。
無重力で寝るのは本当に気持ちいいらしい。吸いこまれるように眠ってしまうらしく、宇宙飛行士たちは仕事中も大変だと聞いたことがある。

A3. 星の誕生を見たい

たしかに見てみたいが、何億年生きればいい?
地球からでも望遠鏡を覗いていれば、運よく見えるかもしれないけれど……。

A4. 読書

本の虫はどこにいようと関係ない。人類最大の発明は本かもしれない。
宇宙に来てまで読書をするメリットはなんだろうと考えると、浮くから持たなくても読みやすいのか?

A5. 化学実験

乗員の命を危険にさらすタイプですね。ボクはよろこんで着いて行きたい。

A6. 人体実験

もちろん自分の体でやってもらおう。
これは1件ではなくて数件あった。気持ちはわからなくもない。

A7. 銀河鉄道に乗る、メーテルに会う

銀河鉄道で思い出したのだが、999では宇宙服を着ないで外に出ていたと思う。しかも風が吹いていた。『宇宙戦艦ヤマト』でも。

A8. 剣道

面を打とうとすれば反動でクルクル回る。ならばと足を固定してもよいが、よけられないので打ちまくるか打たれまくられるかのどちらかだ。いったいどうすればいいのだろう? ガンダムみたいに背中にエンジンをつけるとか?

A9. 「け」攻めのしりとり

『プラネテス』ネタですね! 地球を眺めながらの「け」攻めのしりとりは、『プラネテス』のクライマックスだ。アニメを見たことのない方、漫画を読んだことのない方、名作なのでオススメする。け……ケスラーシンドローム。

A10. 愛を叫びたい

2件もあった。リア充め。宇宙法にクリスマス廃止条文を追加してやりたい。

A11. 火星を地球にしたい

火星で進化したゴキブリと戦う役目は任せよう。

宇宙って怖い?

行きたいと思っている人に一番聞きたかった質問。

Q. 宇宙に怖いイメージはありますか?

A. 半々。

半分ほどの人はやはり怖いようだ。危険だと思っているのだろう。

だが宇宙旅行は飛行機に乗るのとあまり変わらない気もする。飛行機だって外に放り出されたら空気が薄くて死ぬし、宇宙船も外に空気はない。自宅のお風呂でヒートショックを経験するほうがよほど怖いと思うのは、ボクだけなのだろうか?

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宇宙に行きたくない人の特徴

「宇宙に行きたくない」と答えた方にも質問を用意した。ボクは宇宙に行きたい派なので行きたくないと思うのは不思議なのだが、今回のアンケートである程度気持ちがわかったと思う。

宇宙旅行に行きたくない理由

Q. 宇宙旅行に行きたくない理由は何ですか?

A. 怖い6割、興味がない3割

やっぱりみんな怖いらしい。でも割合だけで見ると、宇宙に行きたい派で怖いという人たちとあまり変わらない。怖いけれど宇宙に行きたい人も、怖いから行きたくない人も同じくらいいる。

ここで今回のアンケートいちの珍回答が登場した。
「大学が行かせてくれない」
冗談に思えるだろうが、いやはや実はごもっともな話なのだ。

先日、ボクが南極に行きたがっていることを知っている友人から、南極海で捕鯨をするバイトを見つけたと教えてもらった。無論、大真面目に検討してみた。南極の夏、つまり北半球の日本が冬のあいだだけ休学できないかと。
残念ながらそんな道はなかった。休学するには正当な理由が必要だという。タイでゾウに乗る免許をとって単位を落とした人がいるそうで、南極で捕鯨もおそらく似たようなものとして扱われてしまう。抜け道はなかった。どうしてもクジラを捕りたければ早めに申請が必要で、学費はもちろん払わなきゃいけないし、1年在学期間も伸ばさなくてはならない。
もうちょっと大学はフレキシブルな組織になるべきだと思う。

何の話だったっけ。そうそう。つまり宇宙に行くのもゾウの免許や南極捕鯨バイトと同等扱いになるだろうから、大学から渡航許可が下りないかもしれない。

なぜ宇宙旅行を怖いと思うのか

宇宙に行きたくない人には、なぜ宇宙が怖いのかも聞いてみた。それさえ払拭できれば宇宙旅行に出かけたい人も増えるはずだ。

Q. 〈怖い〉という人に。なぜ宇宙旅行が怖いのですか?

A1. 安全性。事故。

21世紀の今でもロケットの爆発はよく起きているし、「宇宙で何かある≒死」というのが大きいようだ。やはりこの意見が一番多かった。

しかしおもしろいことに、答えはこれだけではなかった。予想外の意見があって驚いた。

A2. 閉所恐怖症だから。

この意見がたくさんあった。狭いのが嫌だと。宇宙船は確かに狭い。今後本格的に人が宇宙に進出するときは、船内の広さやスペースコロニー建設も視野に入れないと影響が出るかもしれない。

A3. 未知の世界は未知のままにしておきたい。人間の手に負えない世界に踏み込みたくない。

ええ……未知のままにしておきたいというのはともかく、人の手に負えないかどうかはやってみないと分からない。たぶん、どんなに人間が頑張っても未知のことは消えないと思うのだが。

A4. 宇宙人に殺されたくないから

いつも思うのだけれど、宇宙人は地球人を殺して何を得するのだろうか?(笑)

宇宙は地上の問題が片付いてから論

最後によく言われている話を質問。「宇宙などにお金を割くくらいなら地上の問題に使うべき」という意見についてだ。
『宇宙兄弟』でも取りあげられていたし、先日NASAの研究者の方もこの質問に答えられなかったとツイートしていた。

現に宇宙開発の職を希望しているボクに対し、家族はこの意見を言ってくる。「もっとまっとうなことを考えなさい。」宇宙開発はまっとうだと思うのだけれど、世間の人たちはどう思っているのだろう?

Q. 宇宙旅行の前に、地上の問題を解決すべきという意見があります。あなたはどう思いますか?

A. ほぼ半々

宇宙関連の人が多数投票していることを含めても、この結果だ。宇宙の前に地上のことを。

しかしボクはこの意見に同意できない。2つ理由がある。
1つ目は、おそらく何年経っても地上の問題が完全に解決することはないからだ。地上の問題といっても際限がない。地上、地上といっていると、永久に宇宙に出られない気がしてくる。
2つ目は、宇宙に出て外から見ることで分かること、役に立つこともあるということだ。GPS、テレビ放送、通信、災害対応、医療、材料工学……実は宇宙に進出しているゆえの恩恵はたくさんある。もっと出ていければ生き物として当然目指すべきであろう人類の分布拡大は進むし、雇用も増えるし科学や技術も発展する。

だからどちらかというと、宇宙に出たほうがよい気がする。

宇宙旅行は飛行機登場の時代と同じ?

ここまでのアンケート結果をまとめてみる。

まず宇宙に行きたい人はけっこう多いことがわかった。
ただしその半分ほどは宇宙旅行を怖がっている。それは宇宙に行きたくない人も同じで、怖いことが理由になっている。
くわえて半分の人は宇宙に行くこと自体を疑問視している。

ここから分かる宇宙旅行の問題点は、まず第一にリスクを減らすこと、第二に宇宙に行く意義を広く浸透させることだろう。

こうして結果を整理していて「あれ?」と気付いた。これは飛行機が登場したときと同じなんじゃないか?

最初、飛行機に乗るのは冒険家たちだけだった。「空を飛んでどうする」といわれ、変人扱いされていたライト兄弟の人類初の動力飛行を見たのはたった十数人。それがエンジニアの努力の結果、今では世界一安全な乗り物といわれ、毎日世界の空を行き交い、今や先進国で乗ったことがない人は少ない。

これは慣れの問題ではないのか? 宇宙旅行を実現するには、エンジニアの努力とみんなが慣れることが必要だ。

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