というわけで、テスト前にやってしまった。
断っておくが断じて現実逃避などではない。何か実験などをもとにポスター発表しろという英語の課題を、単位目当てで忠実にこなさざるを得なかったのである。いくら星好きとはいえテスト前に遊んでいる暇はない。
さすがに流星の母天体の軌道まで出す時間はなかったので、ふたご座流星群の放射点(輻射点)を出すまでで許してもらった。
流星仕分け
まずは流星が写った写真をピックアップする。先日、清里弾丸遠征で撮影したふたご座流星群だ。
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これがなかなか骨の折れる作業だが、どういうわけかテスト前にやると非常に捗る。一枚一枚を凝視できて暗い流星まで見つけ出すことができた。
▲これは分かりやすい例。切れてしまったが上にはっきりと筋が写っている。
▲こんな暗い流星だってテスト前ならなんのその。右下。
▲おもしろい。よく見ると、明るい線の上の方に薄い線がつづいている。つまり落ちてくる途中で突然明るくなったわけで、大気圏突入の最中に何かあったはず。
▲分かりやすい。
▲ヒヤデス星団・ウィルタネン彗星・すばると流星
▲左側の地面すれすれ。テスト前でなければ見逃していただろう。
▲これも左側の山の上すれすれ。
そんな具合で、全部で7枚の写真に流星が写っていた。およそ200枚撮ったうちの7枚である。空が暗い清里高原で、ふたご座流星群の日でもこれだけしか写らないのだ。
浮かび上がった輻射点
さて、こうして得られた流星の写真から、今度は流れた位置を専用の星図にプロットしていく。専用の星図というのがコレ。
ふつうの星図に流星の通り道を描こうとすると曲げて描かないといけないのだが、この星図なら直線で大丈夫という優れもの。
星座とは異なる三角形の星の結びがあって、しかも三角形が塗りつぶされていたりするが、それは観測時に見えた一番暗い星の明るさを記録するためのものだ。流星の眼視観測では、番号ごとの三角形の中で見えた一番暗い星を記録する。それより暗い流れ星は見えなかったということになる。
実は高校時代、これを光害研究で流用させてもらっていた。冬の清里高原で、後輩たちに10分間その三角形の範囲だけを見るよう強要し(すなわち、氷点下10℃で10分間動くなという指令である)、一番暗い星を記録させた。先日OBとして合宿に行ったら、ボクが卒業後に部に入った小学生8年生のような中2がその悪行を知っていた。観測を強制した高3の後輩が未だに恨んで広めてまわっているという。実に懐かしいし気分が良い。
そんなことはともかく、これで直線で線を引ける。写真に写った流星を、周囲の星からおおよその位置を判断して線を引く。そしてこの線を伸ばしていけば、その流星が通った軌道が分かる。
テストの存在は忘却の彼方へ追いやられ、試行錯誤すること1時間弱。できあがった図を見て、ボクは思わずひとりで感嘆の声を上げたが誰も聞いていなくて寂しくなった。
すごい。本当に全部ふたご座からやってきている。
つまりこの図を見るかぎり、清里高原からふたご座のカストル・ポルックスあたりに向けて、宇宙空間に線を伸ばしていけばふたご座流星群がやってきた軌道になる。もちろん重力の影響は考慮に入れなければならないが。
いやはやすごい。自分の手元でダイナミックな宇宙が形となって現れるこの感動。もはや期末テストとか、何をみみっちいこと言っているんだという気さえ起こった。