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誰でも質問してまわりに笑われた経験はあると思う。「そんなこともわからないのか」と。ボクは多々あるので、皆にもあってほしい(笑)。

かといって、馬鹿にされたくなくて質問せず後悔することもある。いったいどうすれば質問できるのだろう?

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入学したての大学教授

ときどき舞い込んでくるバイトに、高校生の科学研究発表会の手伝いがある。ボクも高校生のころちょっとした縁で発表させてもらった会だ。工学の世界に進んだ今も理学系の仲間たちとバイトに来てくれと、ありがたいメールが届く。

つい最近もメールが来たが、金欠に陥っていたボクはもちろん喜んでバイト依頼を快諾した。しかし今回は大きな問題があった。前日になって司会をやれという。

高校生の発表といえど、彼らは日本全国から選抜された新進気鋭の科学者の卵だ。発表の進行はさながら学会のようである。しかも高校の教員たちや保護者、国立ナントカ研究所からやってくる錚々たる教授陣を前にしなきゃならない。ネットに動画が上がるかもしれない。ヘマでもしようものなら、一流科学者たちの笑い声とともに全世界公開処刑だ。

そんな役回りを前日に言いわたされ、原稿を30分前に読むという、今思えばどう考えても無茶ぶりだった。しかしまぁ何とかなってしまった。高校生たちのハイレベルな発表があんまりおもしろいので聞き入ってしまい、緊張がだいぶほぐれたようだった。科学は偉大である。

さて前置きが長くなったが、話したいのは司会をしていてしきりに気になったことだ。質疑応答の時間になると、大学教授ばかりが手をあげて、高校生の手がほとんどあがらない。少々異様だった。

大人びたスーツを着た白髪交じりのおっさん・おじいちゃん教授たち(失敬。)が、目を輝かせながらピンと手を伸ばす。それも「質問のある方はいらっしゃいますか?」と聞き終えるより早い。自分!自分!と言わんばかりに手をあげる。まるで入学したての小学生そのものだ。

一方高校生たちは、発表こそしっかり聞いているもののまるで手があがらない。なぜだろう。学校の授業ならともかく、選ばれて来ている生徒たちが研究発表している場だ。不思議に思ったボクは2つの仮説を立てた。

  1. 高校生には疑問が思いつかない。
  2. 何らかの理由で質問を控えている。

1番ではないことを祈った。だってそうだろう? 教授陣からは湧き水のように疑問が出てくるのに、高校生たちにひとつも出てこなかったら救いようがない。

そう考えるともうひとつの説が有力だ。質問を控えている。ただなぜ控えるのかは判然としない。教授陣に遠慮している、話が難しすぎてわからない、注目を浴びたくない、質問することが恥ずかしい……etc.

ミツバチに刺されませんか?

ちなみにこのとき、ボクも質問したいことがあった。だが司会の立場上、参加者優先でなかなか質問しにくい。話が難しすぎて理解できないことも多く、教授陣とくらべて質問内容もレベルが低そうだった。それでも疑問というやつは、一度もつと保留にするのはいい気分ではない。誰か質問のハードルを下げてほしい。

しかしよく考えてみれば、質問のハードルを下げられるのは司会の特権ではないか。 誰にでもわかりやすくなるように、わざと簡単な質問をしているように見せかけられる。どちらの説が正しいのか調べ、さらには自分の低レベルな質問をぶつけられるのだ。ボクは全世界公開(?)恥さらしの刑に打ってでた。

まず教授陣から手があがらないタイミングを見計らって、研究と全然関係のない質問をした。そのときはミツバチを使った実験結果の話だった。

「そんなにミツバチを扱っていて、刺されたりしないのですか?」

答えがおもしろかったので紹介しておくと、発表した彼は何度も刺されているらしい。それはもう数回なんてものではないそうだ。ただし刺されることを想定して、実験中は何らかの薬品をあたえておく。ミツバチが針を深く刺せないよう活動を鈍らせる。だから実験中の負傷はノーカウントだそうだ(笑)。

ミツバチの話もおもしろいが、このエピソードから気付かされることがあった。ボクは実験と関係のない質問をしたつもりだったが、発表者は実験の話をしに来ている。何か結びつくところがあればすぐ実験の話を交えてしまうのだ。それまで関係ないと思っていた話が関係しているかもしれないのだから、質問の幅は予想より広いことになる。このボクの質問のあと教授陣の質問の嵐が戻った。

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何を勉強したらわかりますか?

そのあとも高校生の質問はほとんど出てこなかった。丸一日の研究発表で半分は質問時間だというのに。痺れを切らしたボクはとうとう言ってしまった。

「ハードルを下げるためにも、高校生の皆さん、ぜひいろいろな質問を」

言ったあと少し後悔した。笑い声が聞こえた。まるで高校生にはハイレベルな質問ができないかのような、バカにした言い方に聞こえてはいないだろうか。だがそんな心配をよそに、すぐさま女子高生のひとりが大学教授たちと同じくらい目を輝かせ、高々と手をあげた。

「何を勉強したら、こういう話がわかりますか?」

会場の雰囲気がパアーっと明るくなるのがわかった。 よくぞ言ってくれた! 何を隠そう、参加者たちの気持ちの代弁だったのだ。科学といってもさまざまな分野の人が一同に会している。教授陣でも話がわからない人たちもいただろうし、保護者や高校の教員もいる。全部わかるわけないのだ。

質問を受けた発表者もなるべく簡単にしようと言葉を選びつつ、反応を見ながら説明していた。質問した本人は恥ずかしそうにしていたが、本当にハードルを下げてくれたことになる。これでどんな内容でも質問できるようになった

質問する奴は偉い

一連のやりとりを見ていて、ふと随分まえ話題になったツイートを思いだした。 何かの講演で出たスライドの写真らしい。元のツイートはツイッター小宇宙に埋もれてしまい、どこにあるのかわからないのだが、とりあえずいいことが書いてあるなぁと思って画像だけ保存していた。

「質問する奴は偉い」

1. 初めに質問する奴は偉い ~次の人が続きやすくなる~

2. 馬鹿な質問をする奴は偉い ~質問の内容のハードルを下げる~

3. 関係ない質問をする奴は偉い ~話が広がる~

いま読んでみて、なるほどそういうことかと納得だ。今回、2番と3番を実際に経験した。

「馬鹿な質問をする奴は偉い」

参加者のうちの複数、あるいは全員がバカかもしれない。誰も話を理解できていないのかもしれない。でも質問する権利は全員にある。なるべく全員が質問して活発に話しあうなら、バカな質問はハードルを下げる最高の一手だ。

「何を勉強したらわかりますか?」は、あの日一番の衝撃だった。念のために言っておくが、ボクは質問した女子高生を尊敬して言っている。笑うやつもいるかもしれないけれど、ボクを含め何でも堂々と質問してよいのだと、あのとき安堵した人もかなりいるはず。同じことを考えていたのだから。彼女は恥ずかしそうにしていたが、聞いていた側からすると感謝したいくらいだ。その質問を待っていた! 内容で質問を躊躇してはいけない。

「関係ない質問をする奴は偉い」

「ミツバチに刺されませんか?」はまったく実験結果と関係ないと思った。それで発表にはなかった実験過程まで話題が広がったのだから、関係ない質問などないのだ。質問者が疑問に思った時点で、それは発表者からすれば関係のある質問なのだろう。

「人に迷惑になるからやめておこう」とか、「こんな質問はまわりに笑われるのではないか」とか・・・。どうしても何か理由を見つけ、自分も質問を控えがちだった。質疑応答とはそういうものではないと思いだした。

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