見学施設がリニューアルしたと聞いて、JAXA相模原キャンパスに行ってきた。
宇宙科学研究所(通称:宇宙研)と呼ばれている施設で、日本のほとんどの観測用人工衛星と惑星探査機の開発・運用を行っている。
ついでにサークルの新歓イベントとして、新入生も連れていった。いや、本来は新歓がメインなはずだが、こんなところで個人的な見学がメインにならないわけがない。新歓はサブだ(笑)。
屋外展示 ロケット2機
以前と同じように入ると2機のロケットが置かれている。
前回来たときは中学生。ガラケーで写真を撮って壁紙にしていた。懐かしいなあ。
左側にあるのが「M-3SII(ミュー・スリー・エス・ツー)」ロケットの実物大模型。
なんてロケットらしい、かっこいい形なのだろう!
サークルの仲間いわく「サンダーバードっぽい」。
世界で初めて地球重力圏脱出に成功した固体燃料ロケットだそうで、ハレ―艦隊など、数々の有名な探査機を打ち上げている。
このかっこいい形には、いろいろな逸話があるらしい(wikipediaで読んだ)。
まず、補助ブースターの先端にあるでっぱり(スパークノイズ)は、エンジンの性能が低いことが判明した際、衝撃波を緩和するために付けたのだそう。しかし、性能が低いことを公表するのがはばかられ、記者会見では「かっこいいでしょ」といってごまかした(笑)。
それから、どう見ても第一段より、第二段やフェアリングのほうが太くて、「いいデザインだなあ」と思っていた。実は「第一段は直径1.4m」という政治的に決められた値があり、上段のほうが太くなったらしく、それを見た官僚が「詐欺だ」といったとか(笑)。
もう片方のロケットは、かの有名な「M-V(ミュー・ファイブ)」の2号機。「はやぶさ」を打ち上げた固体燃料ロケットだ(5号機)。
サークルの仲間と「所詮は模型」といっていたが、こっちは一部実機だったらしい(笑)。
宇宙科学探査交流棟
ロケットの屋外展示を見たあと、新しい室内展示へ。
ご覧のとおり、入ってすぐに宇宙好きにはたまらない展示がたくさん目に入る。
サークルの新入生も退屈しなさそうだったので、ひとりで片っ端から見まくった。
中身を見られる 再使用ロケット「RVT」
手前に再使用ロケットの実験機「RVT-9」、右奥に観測ロケット「S-520」、左奥は「イカロス」の模型。
「RVT-9」は穴があいていたので、中がよく見えた。なるほど、こういう構造なのか。
もしあなたが宇宙研に行ったら、ほかの見学者から“展示物に頭を突っ込んでいる変人”と思われる覚悟を持参して、ぜひ覗いてみてほしい。
SpaceXの「Falcon9」が再使用をはじめてコストダウンを成功させたおかげで、その何年も前から日本は再使用ロケットを「RVT」で実験していたというのに、今になって新型ロケット「H3」を再使用化するつもりだそうだが、はたしてうまくいくのだろうか……。
観測ロケット「S-520」のフィン
「S-520」のフィン。
先端と後ろを斜めにカットしたり、L字金具でとめていたり、なんだかサークルで作っているロケットに通じるところもあって、嬉しい。L字金具は東〇ハンズにもあるし(笑)。
ちなみに、このロケットの派生版「SS-520」は世界最小の衛星軌道投入ロケットとしてギネス記録を持っている。通称、電柱ロケット。
「S-520」は電柱よりはずっと太く大きかった。
宇宙帆船「イカロス」の本体
宇宙帆船として有名な「イカロス」の本体。
ついつい帆に目がいってしまうけれど、個人的には本体のほうが好きだ。小さくてシンプルな構造なのに、ここに巨大な帆をたたんでいるのは驚きである。折り紙で再現できるというのも、少し身近に感じられて楽しい。
意外と軽い 金星探査機のアンテナ
金星探査機「あかつき」の高利得アンテナ。
以前はアンテナというと「はやぶさ」の放物線状の形をイメージしていたのだが、初めてこの真っ平なアンテナを見たときは驚いたものだ。
このアンテナ、新入生が持っていて「軽いな!」と驚いていたので、自分も持ってみた。めちゃくちゃ軽い。
よく見るとハニカム構造をしていた。
これで惑星間通信ができるのだから、すごいなあ。
怖いほど薄い大気球
ロケットを使わずにそこそこ高いところに行ける大気球。
わけあってかなり興味がある。
驚いたことに、コンビニのビニール袋よりも薄い素材でできている。怖いくらい、強度もあまりない。これでも大丈夫なのか。
実験では破れないそうだが、リニューアル直後だというのにビリビリだった(笑)。
リュウグウ到着間近 「はやぶさ2」
「はやぶさ」の後継機「はやぶさ2」。
降下するカプセルや小惑星「リュウグウ」とともに、模型が宙づりで展示されている。
おもしろいと思ったのはパラシュートだ。
宇宙研で見たはやぶさのパラシュート、よくできているなあと思った。
ビニールの十字と残りがメッシュ。減速しつつ、風も逃して方向がブレない。しかもメッシュだから形はきれいに保たれる。
真似しよっ。 pic.twitter.com/VN2r93gJu1— アロー (@shudooooooon) 2018年4月22日
これを書いている時点で、小惑星「リュウグウ」に、地球―月間の距離の半分以下にまで近づいている「はやぶさ2」。到着まであとわずかだ。
角ばった粗い「リュウグウ」と「はやぶさ2」の模型を見られる最後の機会ではないか?
ところで、「はやぶさ2」の模型の下に、こんなボタンがおかれている。イオンエンジンをつけたり消したりできるのだ。
というわけで、まあ実際にはやらないだろうけど、出力最大!
ちなみに奥には、「はやぶさ」の展示スペースがあり、カプセル実物などを見ることができる。
個人的に一番おもしろい展示だったが、残念ながら撮影禁止である。
「はやぶさ2」ではじめて試される実験に、人工的にクレーターをつくり小惑星内部の試料を持ち帰るというものがある。火薬で鉄板を変形させ、弾丸のように打ち込む予定だそうだ。その鉄板。
世界初の小惑星からの生中継の計画もあるそう。楽しみ!
「はやぶさ」や「はやぶさ2」のサンプルは、こういう装置で分析する。
「はやぶさ」のときは、ヘラでサンプルを飛ばしちゃって、一時的にどこに行ったかわからなくなったとか(笑)。
大気圏再突入の新手法
現在研究が進む「展開型エアロシェル」。
『機動戦士Zガンダム』でも登場していたが、風船のように膨らましたシートで大気圏に再突入する、その試作品だ。
これができれば、宇宙からの帰還がずっと簡単になり、機体を軽くすることができる。
他にもいろいろあったのだが、全部を紹介することはできないし、新歓イベントだったため時間制限もあり、すべては見られなかった。
たぶん、じっくり見ようと思えば半日は必要だと思う。
ほかの展示も少しだけ写真を載せておく。
火星探査用航空機?
火星の薄い空気に対応して、もう少し翼面積が大きいかと思っていたが、そうでもなかった。
探査ローバー(の裏側)。
電子銃で人工的にオーロラをつくり、スペースシャトルから観測したことがあったらしい。
全然知らなかったが、おもしろいことをする人がいるなあ。
実験は成功したそうだ。
日本の宇宙科学探査の歴史の紹介。
ところで、この棟の壁には少しオシャレ?な壁画がある。
未来の予定されている探査機や、月探査衛星「かぐや」が月に落ちている様子など、宇宙好きには想像力をかきたてられる嬉しいポイントだ。
相模原市立博物館
宇宙研と道路を挟んで向かい側に、相模原市立博物館がある。こちらもわずかだが宇宙関連の展示やプラネタリウムがあるので、ついでに足を運んだ。
宇宙研のシンボルだった「はやぶさ」の実物大模型は、こちらに移動している。
久しぶりだなあ。初めて見たときも思った気がするけれど、こんなに小さかったっけ?
火星探査機「のぞみ」。
火星の目の前まで行ったにもかかわらず、通り過ぎざるをえなかった残念な探査機。
でも「のぞみ」がなかったら「はやぶさ」の成功はなかったといわれるし、失敗は成功の元ということで。
探査機の人気投票をやったらしい。
「はやぶさ」、「はやぶさ2」以外もみんな知っておいてあげて(笑)。
でもマニアもいたみたいで、「スプートニク2号」とか。なんで1号じゃなくて2号が好きなんでしょう?
たぶん、ボクだったら「カッシーニ」に投票するだろうな。
宇宙ではないけれど、アカスタ片麻岩。
40億年近く前の大陸地殻の痕跡で、かなり古い岩石だ。
アエンデ隕石。
隕石としてはそこそこ有名なもの。
ちなみに「はやぶさ2」が向かっている小惑星「リュウグウ」は、この隕石と同じ炭素質だといわれる。
結局、今回も長文になってしまいました。
以前よりも充実した展示になっていて、大満足でした。