先日、論文を書いた。初めての論文執筆なのに英語で、国際学会の発表付きだ。

 当然わからないことばかりだが情報はすくない。何が正しくて何がいけないのか分からない。しかし論文の書き方など、あたかも生まれたときから知っているかのように指導を受ける。初心者にはちと厳しい。

 そこで本を買って読んだり、専門の講座に通ったり、実践で指導教授に叱られたりしながら学んだコツをまとめた。まだ1本しか書いたことはないけれど、初心者だからこそ見えることもあると思う。すこしでも参考になれば嬉しいです。

※注意:ひと口に論文の書き方といっても、分野や学会によってルール、マナーはちがう。同じ大学のふたりの教授に正反対の指導をされたときもある。この記事をすべて鵜呑みにせず、指導教員や学会の指示を優先してほしい。

論文を書くコツ

はじめての論文執筆チュートリアル

 はじめて論文を書こうと机のまえに座ったとき、まず何からどう手を付けたらよいのかわからなかった。試行錯誤して1本書き終え、いまのボクなら次のステップで書くと思う。

  1. 論文の軸を決める
  2. 構成を大まかに決める
  3. アブストを書く
  4. 肉付けする
  5. 全部書く
  6. シンプルになるよう削る

 順に説明する。

① 論文の軸を決める

 論文執筆の最初にして最も大事なステップ。

 論文にかぎらず報告系の文章では、なぜその論文を書く必要があるのか、何を伝えたいのか、誰に読んでほしいのか、目的が明確でないと意味をなさない。まずはこのあたりの軸を簡潔にまとめたい。

 これは読者にとってわかりやすくするためでもあるが、じつは論文を書く自分のためにもなる。軸があやふやだと何を書いているのかわからなくなり、あとで苦しくなってしまう。

 注意したい点をいくつか。

 たとえば伝えることが実験装置の試運転の結果報告なのか、実験結果の最終報告なのかで、同じデータでも読む人の捉え方はちがってくる。またシミュレーションによる検証報告か、実験値の検証報告かでフィードバックの内容が変わる。伝えることはただ“結果の報告”などではく、読者に間違いなくしっかり伝えるため具体的に設定したい。論文の結論に書くことをイメージするとよいと思う。

 さらに報告内容を決めるだけで満足してもいけない。学校のレポートならそれでよいけれども、これではなぜわざわざ論文を書く意味があるのかわからない。相手になぜその内容を伝えるのか、理由までしっかりまとめて、初めて目的が明確になる。

② 構成を大まかに決める

 論文の構成には次のようなおおむね決まったパターンがあり、暗黙の了解となっている(海外の教育カリキュラムでは高校生あたりでちゃんと勉強すると聞く。日本では軽くしかやらないよね・・・)。

  • 背景(Introduction)
    研究が必要な理由を読者に理解してもらう。自分の研究の有用性と新規性がわかるようにする。
  • 目的(Purpose)
    「〇〇を示した」と結論に書きたいのなら、「目的は〇〇を示すこと」と書くとわかりやすい。
  • 方法(Methodology)
    条件や手法を説明する。条件を先に説明すると、読者が手法の妥当性を理解しやすくてよい。
  • 結果(Results)
    結論を支持するデータとその考察を述べる。
  • 結論(Conclusions)
    論文で最も伝えたいことを書く。目的に合わせて「〇〇を示した」など。
  • 今後の展望(Outlook)
    研究がまだ道半ばであるならば書き添えておきたい。読者は研究の将来が気になる。結論に組みこむことも。
  • 謝辞(Acknowledgments)
    研究でお世話になった人・団体・支援などにお礼を書く。共著者が入らないように気を付ける。敬称(ProfessorやDr.など)にも注意。
  • 参考文献(References)
    学会によって書き方が異なるので指示にしたがう。

 たいていの人は当然この順序で並んでいると思って読むので、パターンに沿わない書き方をすると読みづらく感じてしまう。まずはこのパターンに忠実に構成を考えるべきだろう。

 自分の書く論文はどんな内容か、それぞれの項目について箇条書きで具体的に書きだしてみると、次第に論文の流れが浮かび上がってくると思う。コツは結論から逆にたどって書きだすこと。結論に話の展開をうまく導きやすい。

③ アブストを書く

 論文の流れを把握できたら、アブスト(要旨)を書いてみる。

 アブストはほとんどミニ論文といえる。読者はアブストを読んで、その論文をすべて読むか、一部だけ読むか、あるいは読まないかを決める。だから論文を読まなくてもよいように、それ単体で完結させなくてはいけない。何の論文か的確にわかるように、②でつくった流れに沿って要点をシンプルに伝えよう。

④ 肉付けする

 ②でつくった構成に載せるべき情報を肉付けしていく。実験条件の細かなパラメータや結果の説明に必要なグラフなど、とにかく必要なものを注ぎこもう。

 実際に本文を書くための下準備なので、やり方はなんでもいい。構成のメモに矢印を引っぱって付けたしてもいいし、これから書くWordやTeXのテンプレートに直接書いてみてもいい。大事なのはなるべく書くべき内容を網羅することだ。

 ちなみにボクは構成を箇条書きしたWordに、必要な画像やグラフを貼り付け、さらに説明の箇条書きを書き足していった。やりやすかったと思う。

⑤ 本文を書く

 ここまでくれば、もうかなり完成形が想像できていると思う。あとはとにかく本文を書くだけだ。謝辞や参考文献もお忘れなく。

⑥ シンプルになるよう削る

 書き終えて「完成!」ではなく、ここからが大事。神は細部に宿る(一本書いただけで生意気だけど、言ってみたかったんです笑)。

 まずは数日放っておいて、論文の内容を忘れるまで待つ。ボクはブログを書くときもよくこうしていて、漬物みたく”寝かせる”なんて言っている。

 寝かせたら、その忘れた状態のまま自分の書いた論文を読んでみる。すると何も知らない読者と同じなので、どこがわかりにくいか一目瞭然となる。オレはこんなわかりにくい文を書いていたのか――とすこし凹んでから、気になった部分を直していく(笑)。

 このときのコツは、基本的に削る方向で直していくことだ。量を確保すればよいものができる気がして情報を補いたくなりがちだが、これはわかりにくくなって逆効果なことが多い。削れるところはなるべく削って、②で考えた構成に沿うシンプルな流れを追求しよう。そのほうが読者に優しい。

 この作業を2、3度くり返すと、それなりによいものができあがる。可能なら誰かに読んでもらうと、自分では気付けない発見があるだろう。論文ではなく発表スライドの話だが、ボクはほぼ完成と思ったものを先輩や後輩7人に見てもらった。2時間後には原型をとどめていなかった(ありがたい!)。

論文執筆で気を付けたいこと

 ボクの失敗事例を恥を忍んで並べてみた。要するに、読者のことを考えて書こう。

論理性を欠かないように

 論理を欠いた文章が出てくると、その瞬間読者は読む気を失ってしまう。流れを考え論理的に文章を構成するのは最優先事項だ。内容を理解できない論文じゃ意味がないのでね。

重複を避ける

 内容や語句の重複は極力避けるべきとされている。論文は小説ではないからシャレた書き方をするべきではないし、何度も同じことを言うのは読み手の時間を無駄にする。不要な文はとにかく削ろう。

 また同じものを様々な言葉で説明すると、かえって理解しづらくなる。登場する語句もなるべく統一しよう。

 ただし、まえに書いたことを再確認してまとめる結論の章だけは例外だ。

言葉の正確さより、伝えることを優先する

 科学に忠実であるためには、正確な言葉を使うのが重要に思えるかもしれない。けれど論文を書く目的は相手に伝えることだ。もし正確な言葉づかいがわかりにくくなる要因ならば、伝える上で最もふさわしい言葉づかいを選ぼう。間違ったことを言わなければ問題にはならない。

読者にとってややこしいことはしない

 たとえばゲージ圧は使わず、すべて絶対圧で統一するなど。この場合研究の質も疑われてしまう。紛らわしい部分、ややこしい部分は徹底的に直そう。

グラフの表示方法

 グラフは見切れてはいけない。わかりやすいように一部を拡大して見せても、他の部分が見切れてしまうと読者は気になってしまう。最悪の場合、見せたくないデータを切りとっていると疑われかねない。

 また複数のグラフを比べるとき、軸の異なるものを並べたりしてもいけない。まともな研究をしているのか、信頼性に疑念を抱かせかねない。

英語で論文を書く

 ふつうの英文を書くだけでもひと苦労なのに、さらに英語論文執筆ではルールも慣習もわからなくて戸惑いがち。でも以下のコツを抑えればすこしは怖くなくなると思う。

まずは日本語で書く

 最初は日本語で書き、あとで英文に訳すことをおすすめする。日本人だと日本語で考えるほうがスピーディーなので、文章を練るときは遠回りに見えて実は近道な気がしている。

主語をどうするか

 自分を主語にするのか(I)、チームを主語にするのか(we)、あるいは人を主語にしないのか(it)。これは分野や学会によって大きく異なるらしい。実際に投稿する学会の論文を読んで、参考にするのが確実だと思う。

 ちなみにボクが専攻する工学ではwe(チームが主語)をよく見かける気がする。物理や自然科学系はweが多いそうだ。人文学系は単独筆者が多いからか、weは使いにくいらしい。

時制をどうするか

 日本人にとって英語の時制はかなり厄介に思えるけれど、じつはネイティブでも意見が分かれるそう。というわけで、以下のいくつかの基準を抑えたら、あとはフィーリングでよいと勝手に解釈している。読者が理解できればそれでいいのだ(ところで免責事項のページに、このブログでの発言は一切保証しかねると書いてある)。

 基準を見ていこう。まずは現在形と過去形の使い分け。

 背景の章などで過去の先行研究について書く例を考えてみる。「誰かが〇〇の実験を行った」などの場合はふつう過去形を使う。しかし「先行研究の実験結果は〇〇なので」のような場合は現在形がよい。その実験結果はいつ誰がやっても再現可能な”普遍的事実”なはずで、すでに過去の話ではないからだ。広く知られていればなおさらである。

 背景の章から結果、考察、結論に話を移そう。その論文で初めて示す結果(得られたデータ)には過去形を使う。そのとき(過去)の実験で得られた結果は、まだ普遍的事実になっていないからだ。けれども考察するときは、”いま考えている”ので現在形で書くのが普通らしい。

 つぎに過去形と現在完了形の使い分け。

 日本人は完了形が苦手な人が多いらしい(かくいうボクもそのひとり)。中学英語でやったかもしれないが、現在完了形は現在と関連がある過去の話をするときに使う。いまも影響があるときや、その実験を今もつづけている最中など。過去形と現在完了形のどちらで書こうか迷ったら、一度おさらいしておこう。

 とはいえ分野にもよるだろうが、実際の論文でよく使われているのは現在形と過去形のふたつらしい。大雑把に分けると以下の感じだろうか。

背景……過去形
目的……現在形(過去形より現在形がベターとされているそう)
手法……過去形
結果……過去形
考察……現在形
結論……現在形

なるべく不要な語句・表現は使わないようにする

 方針は日本語の場合と同じで、とにかく削る。だが実際にやってみると、非ネイティブのつたない英語力では難易度が日本語の比ではない。ちなみにアメリカでは「One word, one meaning」と言われているそうだ。

具体的に例をあげよう。

  • 「It is … that …」や「There is …」などの構文は避ける。ItやThereに意味がないうえ無駄に長くなる。
    例)× It is indicated that there are three results (Fig.4).
    ○ Figure 4 indicates three results.
  • 動詞にできる名詞は動詞にしよう。
    例)× The proposal was presented at the conference.
    ○ They proposed at the conference.
  • 関係代名詞を減らそう。ついついwhoやwhichを使ってしまうけれど、これらも特に意味はないので、使わずに済むなら無いほうがよい。しかもネイティブにはすこし幼く見えるそうだ。
    例)× The device which was used by last year has not new systems.
    ○ The device used by last year has not new systems.
  • 大げさな表現を排して、シンプルな文を心がけよう。長い文は見栄えはよいけれど、読みたくなるのは短い文だよね。
    例)× Actually, EV has not the effect of reducing CO2.
    ○ Actually, EV does not reduce CO2.

受動態はなるべく避ける

 日本語でも「〇〇が示される」のように、主語を自分ではなくモノ・コトにする受動態の表現をよく見かける。普遍的事実を扱う学術的文章で特にその傾向は顕著で、かつては推奨されていたとも聞く。しかし受動態の使用は避けるべきというのが、昨今の世界共通の認識になっているらしい。誰が何をどうしたのか明確でないと、文がわかりにくくなってしまうからだ。どうしても受動態が多くなりがちなので気を付けよう。

スペルに気を付けよう

 当たり前だけれど、これが意外に盲点だったりする。注意したいポイントを羅列してみた。

  • 論文のタイトルは、基本的に各単語の一文字目を大文字にする。しかし冠詞(aやtheなど)や接続詞、前置詞は4文字以下なら小文字のままにする。 またタイトルの先頭の冠詞は省略してもよい。
  • Resultsは基本的に複数形のsを付ける。ひとつしか結果がないということは稀だろう。
  • ”謝辞”のスペルは、米国ではAcknowledgmentsとなる。gとmの間にeを付けない。英国ではeを付ける。
  • 論文はフォーマルな文書なので、略した書き方を使ってはいけない。たとえば「don’t」ではなく「do not」にしよう。
  • 値の範囲を示すときに「7~9」という書き方はしない。「7 to 9」または「7-9」と書く。
  • 基本的に本文中で数を扱うときは、算用数字ではなくしっかり単語を書く。図表番号や値は例外。
  • dataは複数形であることに注意しよう。「data is」は間違いで、正しくは「data are」になる。
  • issueとproblemのちがいに気をつける。issueは人によって意見が分かれる議題、problemは解決すべき問題を意味する。
  • 接頭辞(non, sub, micro, multi, ultra など)には基本的にハイフンをつけない。修飾する語にそのまま結合してしまう。
    例)subdevice

よく使う動詞

investigate調査する
explore探査する;調査する
identify確認する;原因を特定する
verify検証する;確認する
compare比較する
contrast対比する
test試験する
examine調べる;試験する
solve謎を解く;解決する
answer疑問に答える
elucidate明らかにする
reveal明らかにする
evaluate評価する;(数学で)値を求める
assess価値や重要性を評価する
propose提案する
report報告する

 ちなみにsuggest(ほのめかす、示唆する)は曖昧な表現なので、理工系ではあまり使われない。

よく使う接続語

 書いていてけっこう困るのが接続語。レパートリーが少すぎて使える言葉が一巡してしまう(笑)。すこしリストアップしておく。

first1つめに
second2つめに
third3つめに
finally最後に
thereforeそれゆえ
thusそれゆえ;このようにして
consequentlyそれゆえ
otherwiseそうでなければ
howeverしかしながら
neverthelessにもかかわらず
even though であるけれども;にもかかわらず;たとえ~でも
on the contraryそれどころか
while~なのに;さらに
on the other hand一方で
furtherそのうえ
furthermoreそのうえ
moreoverさらに
besidesそれに;くわえて
for this reasonそのため
becauseなぜなら
because of~のため
due to~のため
incidentallyちなみに
also~も同様に
like~のように
likewiseおなじように
similarlyおなじように
for exampleたとえば
for instanceたとえば
such asたとえば~など
to illustrate図解すると
as a resultその結果
accordinglyその結果
in conclusion結論として

 ちなみに、andを使うのはなるべく避けたほうがよいらしい――いや、難しい・・・。

ちょっと使える表現

 日本の学校英語ではあまり使わなかったり、論文で多用されるちょっとした表現をまとめた。知っていると便利だ。

  • 「〇〇について」を日本人はaboutで表現することが多いが、実はすこし幼いイメージの表現だったりする。フォーマルな場である論文では、aboutと同じ使い方ができるonに置き換えるとよい。
  • 論文の目的を述べるときは「The purpose of this paper is to …」という形が使いやすい。
  • manyは疑問文や否定文でよく使われ、肯定文ではあまり使われないらしい。論文執筆では「A number of …」「A lot of …」が一般的だそうだ。
  • should(~すべき)はすこし強い表現のようにも思えるが、日本人が思っている以上にネイティブは多用する。どんどん使っていきたい。
  • i.e.で”つまり”の意味になる。
  • 「図を参照」と書きたいときは以下の表現が使える。
    • Figure 1 shows…
      文中ではFig.と略さない。
    • … to analyze data (Fig. 1).
      文末ではカッコ書きで略して書く。もともと”(See Fig. 1)”と書かれていたが、Seeが略されるようになったらしい。

ツールを使う

 最後に困ったときの最終手段、DeepLとGrammarlyをご紹介。

 DeepLはPCに常駐させておくと、必要なとき即座にショートカットキーを押して英文と日本語文の変換ができる。論文執筆にかぎらず便利なので、入れておけばなにかと役にたつ。

 GrammarlyはWordのアドオンとして使うことができ、文法やフレーズのミスを指摘してくれる。自分が英語のどんな文法が苦手かもよくわかる。

 ただし、これらのツールは万能ではない。あくまでも自分で考えて書いて、困ったときだけ参考にするくらいがちょうどいいと思う。「英語は自分で勉強しろ」云々を言いたいのではない。頼りすぎると痛い目にあうと経験者が忠告しておきます・・・。

英語で学会発表するコツ

 ボクの場合はコロナ禍でオンライン開催だったため、プレゼンはあらかじめ動画を撮ってアップ、質疑応答だけテレビ電話した。本来の学会発表と勝手はちがうが英語でのプレゼン講座を受講し練習もしていたので、参考にはなるのではないかと。

スライドの作り方

 論文ほど細かくつくる必要はない。大事なことは見る人の関心を惹きつけ、一番伝えたいことを頭のノートにメモって帰ってもらうことだ。もし興味が湧いたら、論文も読んでくれるだろう。

 そのためには、「論文を書くコツ」のステップ②で作った構成を流用するといい。話の流れがシンプルにまとまっているので、順番もそのまま、どの内容をどうスライドにまとめるか考えるだけだ。

 一枚一枚のスライドは、なるべく要素をすくなくしたい。初めて話を聞く聴衆は、一度に大量の情報をもらっても覚えることはない。肝心な部分に絞って話す。ほかの細々とした話は質疑応答で説明する。目指すは読者がひと目見ただけで内容を理解できるスライドだ。

 と、ここまでが本来あるべきスライドの作り方である。しかし英語非ネイティブの初心者が、国際学会で発表するとなれば話は変わってくる。

 まずスピーチを暗記しなくてはならない。日本語でも難しいのに英語で10分以上話すのだから大変だ。緊張している状況で英語の原稿を思い出し、全体の流れや内容に留意しながら、発音にも気を付けつつ、スピードや聴衆の反応も見て……難しすぎて非現実的だ。

 そこで多くの人がやっているのが、発表原稿をほぼそのままスライドに書いてしまうこと。最初こそボクはこのスタイルをダサいと感じていたが、学会発表が終わったいまはおすすめしたい。理由はふたつ。

 1つ目、国際学会の聴衆は英語ネイティブだけではない。非ネイティブの聴衆には聞いてもわからないことが多々ある。さらにネイティブでも、たとえばインド出身の方などは発音がかなり訛っている。そんなときスライドを読めばわかるというのは大変助かる。

 2つ目、実はネイティブも案外このスタイルでスライドを作っている人が多い。ネイティブがやっているのだから、非ネイティブがやっても悪目立ちすることはない。堂々と発表できる。

 そんなわけで、原稿丸写しスタイルには賛否両論あるが、ボクは学会発表に慣れるまでこのスタイルでもよいと思っている。下手に背伸びするよりも、伝えられればそれでいいのだ!

 あとはひとつコツを。

 プレゼンは論文ほどフォーマルではなく、学校の講義のイメージだ。そのため、たとえば重要な部分でわざと疑問文を使うなど、ちょっとしたテクニックを駆使できる。積極的に工夫したい。

英語でプレゼンするコツ

 こればかりはノリが大事になってくる(と勝手に思っている)。ためらうことなく威風堂々と話す。聴衆はあなたに興味があるのではなく、あなたの発表内容に興味がある。「発表内容さえよければ十分」という意気込みで臨もう。実際ボクが参加した国際学会では、地域や英語の流暢さを問わず、あの手この手で活発なコミュニケーションが行われていた。怖さよりも楽しさが勝る。知的好奇心をまえに国境はない!

 とはいえテクニックもほしい。次のふたつに注意するとちょっとよくなるかもしれない。

強調でリズムをつくる

 英語を話すときは強弱が重要になってくる。強調したい部分ははっきり発音して、isやareなど意味の薄い単語は曖昧に言う。一語一語言うのではなく、強弱でリズムを作りつつ流れるように一文を話す。

 書くと簡単そうに聞こえるが、これはネイティブを参考に練習が必要だ。

 ちなみに早く話す必要はない。ネイティブからすると不慣れな非ネイティブがスピーディーに話しても聞きとれないが、上記を意識しつつゆっくり話すと、ちょっとはネイティブらしく聞こえるのだそうだ。

正しく発音する

 当たり前じゃないかと思われるだろうが、自分で思っている以上に間違った発音をしていることは多い。たとえば chamber という単語。実験をする人はよく聞く単語だが、その読み方が「チェインバー」だと知っている人はすくないと思う。ボクは発表動画を撮影してから知った・・・。よく使う単語はあらかじめ発音を調べておいたほうがいい。

 ちなみに先日の学会では、インドの教授が基調講演で「チャンバー」と言っていて、とても肩の荷が軽くなった(笑)。

英語で質疑応答するコツ

 日本語でも恐ろしい質疑応答の時間。ましてや英語で相手の質問を聞きとってアドリブで返すなど、どうすればできるようになるのか……。

 そこでやっておきたい対策が、補足スライドを作ることだ。ありとあらゆる質問を想定し、それに対して説明しやすいように図やデータを用意しておく。英語が不慣れな以上、この準備をどれだけやったかが、相手にちゃんと納得してもらえるかの分かれ目となる。とにかくできるかぎり補足スライドは作っておこう。

参考文献

 以下、ボクが参考にした書籍だ。

 本当はもっと書きたいことがあるけれど、長くなりすぎなのでこのへんで。すこしでも誰かの役に立てたら嬉しいです。