ソユーズ宇宙船の窓

地球に帰還した“焼きソユーズ”の観察


2023年現在、人を乗せ飛んでいる宇宙船は2種類しかない(弾道飛行を除く)。ひとつがSpaceX社のクルー・ドラゴン、そしてもうひとつがロシアのソユーズ宇宙船である。

 ソユーズ宇宙船の実機が日本橋で展示されていたので、舐めるように観察してきた。大気圏再突入で焼かれ、カプセルは黒焦げだった。ネットでは「焼きソユーズ」と呼ばれている。

 ソユーズ宇宙船は、宇宙船というより、寸胴ですこし大きな魔法瓶のように見えた。パラシュートをつなぐものはワイヤーかと思いきや、しめ縄だった。

 プラズマの流れを思わせる筋、素材が溶けて固まった液滴の跡、表面が剥離して現れた赤茶色の下層 ―― 大気圏再突入で焼け焦げた外壁は、まるで現代アートを眺めているかのよう。

 しかし、およそ1万℃のプラズマとクルーを隔てるハッチの厚さはわずか数cmしかない。焼け焦げた外壁を見たあとだとすこし心許ない。

 船内をひと目見て驚いたのが、小人専用のような座席の小ささだった。大人が背を伸ばせるスペースはないが、これに3人も乗る。

 船内は物が所狭しと詰めこまれている。コンソールパネルにはスイッチがたくさん並び、ディスプレイはタブレットサイズの小さなものがふたつだけ。松本零士の『宇宙戦艦ヤマト』や『銀河鉄道999』に登場しそうだ。

 天井のライトは、SF映画に登場するようなかっこいいものではない。電球をつけるアンティークのライトのような形をしていて、ソ連時代を思い起こさせる。パラシュートの格納部に目を向けると、金属板はベコベコで手作り感がある。

 宇宙開発黎明期を思わせる特徴がたくさんあるが、いまも最前線で活躍する現役の宇宙船だ。

 窓は人の顔が収まらないサイズだった。宇宙飛行士たちはこの小さな窓から覗きこむように、星々や地球を眺めるのだろうか。