地球を代表するアーティストたちが、月に行く。
今日、そんな素晴らしい発表があった。
何が素晴らしいって、この月への旅は科学やビジネスのためだけではなく、一番の目的はアートということだ。
#dearMoonって?
数日前、SpaceX社は民間初の月旅行者を発表するとツイートしていた。
ただ、そのときは以前と「BFR」の形が変わったことのほうが、話題の中心だった。
BFRというのは「Big Falcon Rocket」の略である。
現在SpaceXが打ち上げている「Falcon 9 ロケット」、「Falcon heavy ロケット」の次のロケットだ。
しばらくして、SpaceXのCEO、Elon Muskが意味深長なツイートをする。
「あ、日本人がチケット買ったのか」と、特段気にせず。
以前としてBFRの形のほうが話題の中心。
ところが今日、蓋を開けてみて驚愕した。
購入した前澤友作氏は自分の席のみならず、他にも席を買って「#dearMoon」というプロジェクトを公表したのである。
世界的に有名なアーティストたちを月旅行に招待し、インスピレーションを得て、制作に活かしてもらうという。
なんてこった。素敵すぎる。
「どうせ月に行くのは、ビリオネアとか金持ちだろう。おもしろくない」と思っていたのだけれど、反省。
今回の件、前澤氏はビリオネアとして、その責務を果たしているような気がする。自由に使うこともできるお金の使いみちを、誰にとっても興味深い、素晴らしい企画に使った。
なぜ、アーティストが月に行くことが素晴らしいのか。
さっきから、アーティストが月に行くのは素晴らしい、と言いつづけているけれど、それにはちゃんと理由がある。
昨今、“世の中の役に立つかどうか”が重要視される風潮がある。
ここで言う“世の中”は、だいたい経済の話だ。お金になるかどうか。
宇宙に関して言えば、すぐお金になるわけではない天文学や物理学は、最近どんどん予算が減らされている。何に役立つかわからないものはおしまい、という酷い話。
宇宙開発も厳しいらしいが、技術力を維持し、ほかの国にそれを誇示したり、衛星打ち上げで商売もできる。だから、打ち上がる衛星は科学探査や通信、防衛など実用的なものばかり。しかし、コストがかかりすぎて、民間ビジネスへの移行が加速している。
結局のところお金。ビジネスだ。しかも即効性が求められる。
しかし、常々思うのは、人らしさというのは感情や美術にあるということ。
たしか、アウシュヴィッツ強制収容所に入れられた、哲学者ヴィクトール・フランクルが、『夜と霧』でこんな内容のことを書いていた。どんなに過酷で疲れていて、人として気持ちが失われていくときも、美しいという感覚は健在だったと。
そんなわけで、経済面のみならず、もっと貪欲にただ「おもしろい」「楽しい」「美しい」という感覚、人間らしさを追い求める方向性があればよいのに、と思っていたのだ。
そこに、今回の「#dearMoon」でアーティストたちが月まで宇宙旅行するというアートプロジェクト。
宇宙開発にも科学やビジネスではない、感覚やセンスに訴えるものがとうとうでてきた!
今までもなかったわけではない。惑星間軌道に彫刻を飛ばした例もある。
でも、ここまで誰もが楽しめる企画は初めてだろう。
改めて言うが、前澤氏のアイデアは素晴らしいと思う。
月に行っても大したインスピレーションを得ないのではないか?
ところで、アーティストたちは月でどんなインスピレーションを得て、どんなアートを制作するのだろう?
これは個人的な意見だけれど、月に行くのと地球でどこか観光地に行くのと、実はあまり変わらないんじゃないかと思っている。
地球を代表するような、多感で類まれなセンスを持つアーティストたちが、宇宙に行って大きく変化するとは思えない。
大したインスピレーションは受けず、「普通だった」なんて言うんじゃないか?
それを確かめるという意味でも、今から楽しみすぎる。
でも、打ち上げが2023年なんだよなぁ。ちょっと先過ぎないか……。